電話アリ
朝8時。
仕事に出る支度をしていると、
ケータイが鳴った。
美月が朝方意識を取り戻したとのこと。
容態は回復に向っているらしい。
大急ぎで上司に
「私事のためお休みします」
とメールを打つ。
有給休暇は、まだ30日以上残っているハズだ。
病院に向う道すがら、コンビニへよって腹ごしらえをする。
最近はコンビニがボクの食料庫になりつつある。
病院の玄関で母が待っていた。
「美月のこと、頼むわね」
「ハイ」
「あの子・・・
あなたの名前をずっと呼んでたわ。
きっと今の美月に必要なのは奏さんよ」
「ハイ」
美月が母さんに何を言ったのかはわからないが、
事情がよく飲み込めず、とりあえず返事だけはしておいた。
母と別れ、病室へ向う。
一般病棟からはちょっと離れた
いつもの白い個室へ入る。
美月が横になっていた。
ボクの姿を認めるやいなや、
手をこちらへ必死で伸ばす美月。
ベット際につくと
美月がボクの手を握ってきた。
「かなちゃぁん」
ボロボロと涙をこぼす。
泣き顔が頂点に達している。
酸素マスクが少し曇る。
美月に顔を寄せて話す。
「良く頑張ったな。
お兄ちゃんも美月にまた会えて嬉しいぞ」
顔をコクコク振って必死で頷く。
きっと「私も嬉しい」と言いたいんだろう。
by nanase-kana
| 2008-07-20 21:03
| 回想