機嫌
今日は、かなりご機嫌斜めのようだった。
美月の病室に入る。
いつもなら笑顔で起き上がって来る。
今日はベットに寝そべって背を向けたままだ。
外は雨。
しとしとと降るその音が
雰囲気を一層重いものにしていた。
「美月、差し入れ持ってきたぞ。フルーツだ。」
普段なら眼を輝かせて反応する。
今日は微動だにしない。
こういう時は何を言っても無駄だ。
そっとドアを開けて出て行こうとした。
「お外に出たい。」
点滴が刺さったままの美月が
すくっと立ち上がっていた。
いつもの目つきではない。
明らかに怒気を含んだ眼差しだ。
「今日は雨だよ。やめておこう。」
優しく言ったのが災いしたのか
次の瞬間、美月はダッとドアを開けて
病棟の廊下へ出てしまった。
幸い直ぐに追い付いたが、
その拍子に美月は前のめりに転んでしまった。
抱かかえて起こす。
その眼には痛みから来る涙とは
明らかに違う涙が混じっていた。
2人とも無言で病室に戻る。
またベットに背を向けて寝る。
「かなちゃん、あたし、あと何ヶ月生きられるの?」
胸が張り裂けそうになった。
なんとしてもこの負の精神状態を
脱却させなければ。
by nanase-kana
| 2009-03-15 00:07
| 回想