日帰り検査の日
布団を剥ぎ取り様子を診る。
かなり苦しそうだ。発作を起こしている。
やむを得ず薬を使う。
体に負担が掛かるので使いたくはない薬だ。
発汗が凄いので拭ってからまた寝かせた。
今日は検査の日だった。
ここしばらく体には問題が無かったので、
電車で送ろうと思っていたが、
この分では車の方が安全だろう。
今日は母が車を使っている。
タクシー会社に電話をする。
2時間後に家の前まで送迎をお願いした。
しっかり受け答えできた。
少し休めばなんとか歩けそうだ。
ゆっくりでいいので、着替えるように言う。
日帰り検査なので夜には戻れるはずだ。
いつものようにパンを焼き、コーヒーを沸かす。
冷蔵庫からヨーグルトを出し、器に盛る。
これに結晶化したはちみつを入れる。
美月とボクの好物だ。
玄関のベルが鳴る。
こんな朝早くから来るのは誰だろうか。
トタトタと廊下を歩く音がする。
鍵を開け、勝手に上がって来られる人物は限られている。
母が戻ったのだろうか。
パッと廊下からキッチンに顔が出てきた。
母かと思ったら、舞子さんだった。
ちょうど東京へ出る用事があったので
ついでに寄ったのだそうだ。
舞子さんには美月の面倒を見てもらうことがあったので、
以前から家の鍵を渡していた。
舞子さんが朝食の準備を手伝ってくれる。
二階から美月が降りてきた。
舞子さんに挨拶をして3人で朝食を取る。
美月は、はちみつヨーグルトを飲むようにして
スプーンで掬っている。
固形物はやはり咽を通らない。
食べ終わると病院へ行く準備をする。
ほどなくしてタクシーの止まる音がした。
3人でタクシーに乗り込むと
ドライバーに病院への順路を告げた。
舞子さんが美月を抱き寄せて頭をなでる。
ほとんど親子にしか見えない。
車の揺れに合わせて
美月の顔もコクンコクンと力なく揺れる。
病院について検査の手続きを済ませる。
渡辺さんが案内してくれる。
ボクもそのままくっついて行った。
病院スタッフは誰も止めない。
ボクら兄妹はこの病院では顔パスなのだ。
嬉しくない顔パス。
同じ顔パスならディズニーランドの方がいい。
過去何度も繰り返した光景だが
この不安感に慣れることは無いだろう。
by nanase-kana
| 2010-01-07 21:59
| 回想