神社(2)

病院へ行く時以外では久々だった。

駅を出ると道向かいに大きな鳥居が見えた。
鳥居の前に大きな狛犬が鎮座している。
立派な姿だ。鳥居もまた珍しい。
なんと柱に龍の装飾が施してあるのだ。
こんな鳥居をボクは見たことがなかった。

鳥居の後ろ側は登りの斜面で
かなり急峻な階段になっている。
段数はさほどでもないが、とにかく角度が凄い。
見上げるとちょっとした圧力を感じる。

美月がテンポ良く、
タンタンタンと駆け上がって行く。
それを下から追うボク。
ふと見上げると黒いスカートの美月が
階段を登ってく姿が目に入った。
しかし、本人は肝心な事を忘れている。
短いスカート姿で、
急な階段を勢いよく登るなんて
自殺行為だ。

「おいっ!見えてるぞ。気をつけろっ!」
思わず下から叫ぶ。
息を切らせて階段を登り切ると
美月が腕を組んで得意顔で待っていた。

「へっへーん。見えたって別にいいじゃん。
かなちゃんしか居ないんだから」
「バカモン!そんな子に育てた覚えはなーい!」
美月の軽く頭をコツンとやる。
「あははは、かなちゃんお父さんみたい」
笑いながら境内に向かう。

”お父さんみたい”というか、
ボクとしては完全に父親の気分だ。
by nanase-kana
| 2010-10-05 20:13
| 回想