撮影競争
今日も病院で目を覚ます。
いろいろお世話してくれる。
美月ともほとんど友達状態だ。
着替えを持って美月の病室へ向う。
「かなちゃん、おはよう」
美月はもう起きていた。
ベットに上半身を起こし、
朝食が取れるまでに回復していた。
朝ご飯を食べながらボクに言う。
「次はいつ写真撮りに行けるかなぁ」
「そうだな、もうちょっと様子を見てからかな」
「じゃあさ、あたしが撮りに行けないんだったら、
かなちゃんが撮ってきて!かなちゃんの写真も見たい!」
食べながら夢中で喋ったためか、
口の端からお粥がちょこっとこぼれ落ちる。
口からこぼれ落ちそうになっているお粥を
拭きながらボクは言った。
「美月、俺の写真の腕前にびっくりしちゃうぜ~」
笑いながら冗談っぽく言ったつもりが、
美月には本気に聞こえたらしい。
「よ~し! じゃあかなちゃんとあたしで競争ね」
「競争と言ってもなぁ。どうするんだ?」
確かに写真は上手い下手はあるが、
客観的な評価は難しい。
「コンテストに出して、どっちが入選するか競争~」
にんまり笑ってVサインをボクに突き出す美月。
なるほど、そういうことか。
「わかった。じゃあ競争だな」
美月もこれで目標が出来て、張り合いが出るだろう。
毎日の気持ちが充実すれば、もしかしたら
病気も回復してくれるんじゃないだろうか。
そんな淡い期待をしてしまう。
by nanase-kana
| 2008-07-21 09:31
| 回想