うわさ
1日だけ入院して
次の日には帰宅できた。
手をつないで病室を出る。
病院の廊下で近所のおばさんと
偶然出会う。
このおばさん、近所でも評判の毒舌。
人のうわさやゴシップが大好きなので有名だった。
「あら、美月ちゃん。
お兄ちゃんと仲いいのね~」
「あ、どうも」
おばさんに会釈をする。
退院の手続きをするために、
受付に行く。
その間、美月がおばさんに掴まって
何やら話し込んでいる。
手続きを済ませ、美月の元に戻る。
美月の様子が変だった。
「どうした? おばさんに何か言われたのか?」
「あのね、かなちゃんとあたしは血が繋がってないのに
そんなに仲がいいなんて、おかしいって・・・」
「うん? なんだそりゃ?
血の繋がりがあろうが無かろうが
兄妹だからいいんじゃないのか?」
「かなちゃんとあたしは
変な関係なんじゃないかって
近所の人が言ってるって・・・」
やられた。
あのおばさんの言いそうなことだ。
根拠の無い噂を立てて楽しむ。
困った人だった。
しかし、近所付き合いもある。
直接文句を言う訳にもいかない。
それに、そんなことをしたら
相手の思うツボだ。
ここは無視が一番だ。
「ねぇ、かなちゃん。やっぱり兄妹でも
血が繋がってないとおかしいの?
普通じゃないの? 仲良くしちゃダメなの?」
「そんな訳ないだろ。
あんなおばさんのホラなんて聞き流せ。
近所の人も誰も変だなんて思ってないさ」
「そうなのかな・・・もうあたし
かなちゃんと仲良くしない方がいいのかな。
迷惑かかっちゃうから・・・」
美月が俯いてつぶやく。
「こらっ!そんな余計気を遣うな!
美月が仲良くしてくれないと
俺がさびしいだろうが~」
天井の方に眼をやりながら照れ隠し。
「うん!仕方ない、若い女の子が
さびしい独身男性の相手してあげましょう~」
美月の元気な返事。
顔を見合わせて笑う。
また2人で手をつないで
長い病院の廊下を歩いて玄関に向かった。
by nanase-kana
| 2008-09-21 18:00
| 回想