猫とカメラと
看護師さんが
「女の子は見た目が気になるから」
と気を利かせて、家用の眼帯と
お出かけ用眼帯を用意してくれた。
もちろん、お出かけ用の眼帯は
家用より微妙にオシャレな造りになっている。
カメラを持って
2人で家の周りを散歩する。
隣の家の猫が駐車場の真ん中で
ゴロゴロしている。
この辺りの主ネコだ。
ボクもよく写真を撮らせてもらっている。
御歳16歳。人間で言えば90歳を超える高齢だ。
歳から来る貫禄のせいだろうか、
美月がすかさずネコに近づいても
ぜんぜん微動だにしない。
美月がネコの写真を撮る。
ライブビューを使ってローアングルで攻める。
液晶画面を見てため息をつく。
思うように撮れなかったようだ。
「かなちゃん、あたし写真のこと勉強したいよ。教えて。」
興味のあることは何でもやってみる。
いいことだ。
「よし、じゃあレッスン始めようか」
美月が真剣な眼でコクンと頷く。
写真の一番の基本である、
カメラの仕組みとレンズの仕組みを話した。
いわゆる機材ネタだ。
興味の無い人にとって、こういう話は一番苦手だろう。
でも、ボクは写真はセンスとともに、こういった
道具の部分の知識が無いと
偶然に頼った撮影しかできないと思っている。
ボクに写真を教えてくれた祖父はよく言っていた。
「自分の使う道具くらい、自分でメンテしなさい」
そう、コレクターの人を除いて
カメラもレンズも、写真を撮る道具だ。
自分の使う道具くらい、
最低限は理解しておいた方がいいと思う。
確かに、シャッターを押せば普通に写る時代だ。
どうして写真が撮れるかなんて、知らなくても問題ない。
でも、それを理解しておくかおかないかで
応用が利く幅が圧倒的に違ってくる。
センスは表現の質を上げるのに必要だが、
道具は表現の幅を広げるのに必要なのだ。
センスは意識してたくさん撮って、
上手い写真をたくさん見ていれば、自然に向上してくるが、
機材の知識や使いこなしは、意識して覚え込まないと向上しない。
美月は、写真が写るという原理の
部分はよくわからなったようだが、
幸いその他はよく理解してくれた。
美月に話をしている間、ネコが顔を洗っていた。
明日は雨だろうか。
by nanase-kana
| 2008-09-22 14:07
| 回想